最新事例のご紹介
医療機関は激変の時代を迎えています。
医療制度の変化、人口動態の急速なシフト、そして医師・看護師の人材不足など、医療機関を取り巻く環境は日々大きく動いています。経営の安定と成長を実現するためには、最新の動向を正確に把握し、現場に即した経営判断を行うことが欠かせません。
「医療機関経営の最前線」では、病院・クリニック経営に役立つ最新事例や統計データ、国の政策動向をわかりやすく解説しながら、現場で活かせる具体的なヒントをお届けします。診療報酬改定への対応、人材採用・定着の工夫、デジタル化の進展、そして地域連携の可能性まで、幅広いテーマを取り上げてまいります。
経営に関する“正しい情報”と“実践につながる視点”を共有することで、先生方の経営判断を支え、持続可能な医療機関運営に貢献することを目指しています。
日本の病院経営は今、大きな転換点を迎えています。高齢化の進展、医療需要の多様化、そして医師・看護師不足。さらに、2020年代前半に直面した新型コロナの影響からの回復が一段落した今、病院の収益構造や運営モデルは根本的な見直しを迫られています。
本記事では、最新調査データをもとに、病院の業績状況、戦略的優先課題、国際的評価、そして今後の方向性を整理してみたいと思います。
1. 病院の経営状況:赤字経営が続く現実
2025年の調査によると、日本全国の病院のうち6割以上が赤字経営に陥っています(出典:LEK「APAC Hospital Priorities Survey 2025」)。特に急性期病院では診療報酬改定の影響や人件費高騰が響き、黒字転換のハードルが高くなっています。
指標としてよく用いられるEBITDAマージンを見ると、
という規模差が鮮明です。これは経営基盤の強さや投資余力の違いが背景にあると考えられます。
さらに、病床稼働率80%以上を維持できている病院は全体の40%に届かず、中規模病院では特に低い傾向が報告されています。地域ごとの患者流動や医師偏在も影響しており、「病床はあるが埋まらない」という状況は構造的課題となっています。
2. 経営戦略の優先課題:コスト削減と人材確保
病院が直面する経営課題として、調査結果では以下のテーマが上位に挙がっています:
小規模病院は「支出抑制」が中心課題となり、大規模病院は「デジタル投資や業務効率化」といった攻めの戦略にシフトしています。つまり、規模によって経営アプローチに大きな差が生まれているのです。
特に人材確保は、全国的に看護師不足が深刻化していることから、病院経営に直結する最重要テーマです。働き方改革やシフト調整の工夫、タスクシェアリングによる業務効率化などが求められていますが、「人がいないからできない」という現実的な壁も存在します。あ
3. デジタル化への期待と課題
多くの病院が「デジタルヘルスソリューション」に期待を寄せています。調査によると、導入目的の上位には以下が挙がります:
ただし、実際の導入にあたっては、
といった課題が大きな壁になっています。特に小規模病院では「資金不足」が大きな制約となり、デジタル化の進展が限定的です。
一方、大規模病院では電子カルテの高度化やAI診断支援、遠隔医療など、先端分野への投資が進みつつあります。これらの取り組みは、将来的に病院間の競争力格差をさらに広げる可能性があります。
4. 国際的な評価と日本の病院の存在感
日本の病院は国際的にも高い評価を受けています。NewsweekとStatistaの「World’s Best Hospitals 2025」日本ランキングでは、
1位:東京大学病院(スコア92.80%)
2位:聖路加国際病院(91.63%)
3位:亀田総合病院(88.69%)
がトップ3に選ばれました(出典:Newsweek Rankings 2025)。
また、Brand Financeの調査では、東京大学病院が研究分野で世界3位、京都大学病院が19位にランクイン。日本からは計4つの大学病院が世界トップ100入りを果たしています(出典:Brand Finance 2025)。
これは、日本の医療機関が「研究力」と「臨床の質」の両面で国際的に通用する水準にあることを示しています。
5. 医療業界への示唆:今後の方向性
これらのデータから、病院経営には以下のような方向性が見えてきます。
デジタル化は可能性が大きい一方、導入障壁も多いため、段階的導入やスモールスタートで成果を積み上げる戦略が現実的です。
世界的に高評価を得た病院の事例は、ブランド力を採用や研究収益に活かすヒントとなります。各病院が自院の強みを明確にし、それを経営に結びつける発想が必要です。
病院経営は厳しい状況が続いていますが、大規模病院を中心に戦略的な取り組みも進み、国際的な評価も高まっています。赤字経営の現実と、デジタル化や国際評価といった新しい流れをどう組み合わせるかが、これからの病院にとってのカギとなるでしょう。
地域特性や病院規模に応じた戦略を見極め、限られた資源を最大限に活かすことが、持続的な病院経営の道筋となります。
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